2014年8月27日水曜日

断片、手紙

 空気が灰とも青とも決めがたい色に染まる時間に目が覚めた。昨夜の雨の名残がある。夏の終わりが感ぜられた。秋の空気というほど清澄な感じはしないが、なおそれでも空から滴る雫の音は秋色を帯びているように思われる。

 一通の手紙を受け取った。この時代に、まさしく筆を執って手紙を出す人もいるらしい。宛名は丁寧な楷書で書かれている。ほんのりと橙色のさす、やや気の早い色をした紙に、深い墨色の字が映える。差出人は、封筒には書かれていない。ほかの郵便物には手もつけず、やれやれ、年寄りを急かすでない、とひとりごちつつ飛び石を渡る。

 ペーパーナイフを取り出して、紙の繊維を一本一本丁寧に切り分けていくように封筒を開いてゆく。幾枚かの便箋は、今朝の空気のような色をしていた。最後の一枚だけを抜き取って、署名を見れば、かつての教え子であった。

0 件のコメント:

コメントを投稿